ヘアメイク事務所やヘアサロン、着付けサロンの多くは、地元の個人のお客様や、長く付き合いのある取引先からの仕事で成り立っています。安定している反面、取引先が固定されていると、繁忙期と閑散期の差を埋めにくいという悩みもあります。
一方で、企業の撮影やイベント、全国をまわるツアー、地方の婚礼や伝統行事など、「現地で対応できる事業者が見つからない」というご相談は毎月のように届きます。とくに東京以外の地域では、手配する側が地元の事業者とつながる手段を持っていないことが少なくありません。
本記事では、法人のヘアメイク手配を行っている立場から、企業が手配先に何を求めているかを整理し、事務所・サロンが企業案件や地方案件の取引先を広げるための準備と進め方を解説します。
結論
- 企業が手配先に求めるのは、技術に加えて「人数をそろえられるか」「急な欠員を埋められるか」「請求が整っているか」の3点です。
- 取引先を広げる第一歩は、対応エリア・同時に出せる人数・得意な案件・対応できる時間帯を1枚にまとめることです。
- 地方案件は、前泊・深夜仕込み・移動を含めた見積もりの型を用意しておくと、問い合わせに即答できます。
- 企業から受ける仕事は、自社のスタッフに自社で指示を出す業務委託(請負)の形を守ることが大切です。
なぜ地方の事業者が求められているのか
ヘアメイクの手配網は東京に集中しています。ところが、ご相談は全国から届きます。東京からアーティストが向かう場合、交通費と宿泊費が加わり、移動時間の分だけ拘束も長くなります。発注する企業にとっては、費用が膨らむうえに、当日の遅延リスクも抱えることになります。
たとえば最近、東北地方の伝統行事で、花嫁行列に参加する方の婚礼和装の着付けとメイクを1〜2名分手配したいというご相談がありました。支度は真夜中に始まり、朝7時までに仕上げる必要があります。こうした案件では、その地域にあり、婚礼和装と早朝の支度に慣れている事業者が、費用の面でも安心感の面でも最適な選択肢になります。
つまり、地方の事務所やサロンにとっては、「地元にいること」そのものが強みになります。あとは、手配する側にその存在が伝わっているかどうかです。
企業が手配先を選ぶときに確認すること
企業の担当者が事務所やサロンに仕事を出すとき、確認される内容はおおむね次のとおりです。発注側の視点はヘアメイク手配会社の比較チェックリストやヘアメイク事務所の「大手」とはにも詳しくまとめています。
| 確認されること | 具体的な中身 | 準備しておくもの |
|---|---|---|
| 体制 | 同時に何名出せるか。1日に何件まで受けられるか | 在籍人数と、同時に出せる最大人数 |
| 代役 | 担当者が体調不良のとき、代わりを出せるか | 代役の手配方法と、連絡の流れ |
| 得意な案件 | 撮影、ブライダル、和装、ライブ、イベントなど | 案件の種類ごとの実績と写真 |
| 対応できる地域・時間帯 | 出張の範囲、早朝・深夜の可否 | 地図や地域名で示した対応範囲 |
| 請求 | 適格請求書(インボイス)の発行、支払条件 | 登録番号、請求書の書式 |
| 秘密保持 | 撮影内容や出演者の情報を守れるか | 秘密保持の社内ルール |
| 万一の備え | 施術中の事故や、持ち込み品の破損への対応 | 賠償責任保険の加入状況 |
小規模な事務所やサロンでも、この表の右側がそろっていれば、企業案件の候補に十分入ります。規模の大きさより、「何ができて、何ができないか」がはっきりしていることのほうが評価されます。
自社の体制を1枚にまとめる
取引先を広げるときに、まず用意したいのが自社の紹介資料1枚です。ホームページがあっても、手配の場面では「この案件に合うか」を短時間で判断する必要があるため、要点がまとまった資料のほうが使われます。
- 会社・屋号の概要:所在地、代表者、設立年
- 在籍人数と同時に出せる人数:「在籍8名・同時4名まで」のように
- 得意な案件:上位3つと、それぞれの代表的な実績
- 対応エリア:拠点からの出張範囲。前泊が必要になる地域の目安
- 対応できる時間帯:早朝・深夜の可否と、その場合の条件
- 保有資格:美容師免許の保有者数、着付けの資格など
- 料金の目安:拘束時間ごとの基本料金と、上乗せの考え方
- 請求・契約:インボイス登録の有無、支払条件、秘密保持への対応
ヘアセットや着付けを伴う仕事を業として行うには、美容師法にもとづく美容師免許が必要です。企業案件では免許の有無を確認されることが多いため、保有者数を明記しておくと確認がスムーズになります。美容所以外の場所での施術は、法令や各自治体の定めで認められた範囲で行う必要があります。
地方案件の見積もりの組み方
地方の案件、とくに婚礼や行事の早朝支度では、施術そのものより時間帯と移動が費用を左右します。問い合わせに素早く答えられるよう、次の項目を分けて見積もる型を用意しておくと便利です。
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 施術料 | 1名あたりの料金。婚礼和装の着付けとメイクなど、内容ごとに設定 |
| 拘束時間 | 準備から撤収まで。待機時間が長い行事では、ここが大きくなります |
| 早朝・深夜 | 始発前の入りや、夜間の支度。時間帯としての上乗せを明示 |
| 交通費 | 実費精算が基本。車移動の場合は距離や駐車場代の扱いを決めておく |
| 宿泊費 | 真夜中の支度では前泊が必要になることが多い。実費か定額かを明示 |
| 人数による調整 | 2名以上の担当で段取りが変わる場合の扱い |
発注する企業は、「総額がいくらになるか」と「何が含まれているか」を同時に知りたいと考えています。項目を分けて示すだけで、社内の稟議も通りやすくなります。発注側が見積もりをどう読むかは失敗しないヘアメイク見積もりの読み方で解説しています。
業務委託で受けるときの注意点
企業や手配会社から仕事を受けるときは、業務委託(請負)の形をとるのが一般的です。このとき大切なのは、当日の段取りやスタッフへの指示を、自社で行うことです。発注側が事業者のスタッフに直接、細かな指揮命令をする形になると、労働者派遣に当たるおそれがあります。
- 仕上がりのイメージや時間の条件は、発注側から自社の責任者が受け取る
- 誰がどの順番で誰を担当するかは、自社で決める
- 契約書には、仕事の範囲・報酬・キャンセル・秘密保持・支払条件を記載する
契約の形ごとの違いはヘアメイク「派遣・業務委託・フリーランス直接契約」の違いに、秘密保持についてはヘアメイク現場の秘密保持契約(NDA)完全解説にまとめています。個人のアーティストに再委託する場合は、2024年11月に施行されたフリーランス新法にもとづく取引条件の明示なども必要になります。
取次(手配会社)を使うメリットと限界
自社で営業をかけるのが難しい場合、手配会社の取次を利用するのも一つの方法です。良い面と限界を、あらかじめ理解しておきましょう。
| メリット | 限界 |
|---|---|
| 自社では接点のない企業案件・遠方の案件に出会える | 紹介は条件が合う案件が発生したときのみ。件数の約束はない |
| 企業との最初の窓口や条件のすり合わせを任せられる | 案件によっては価格の条件が先に決まっている |
| 営業のための時間や費用をかけずに済む | 手配会社ごとに進め方や契約の形が違う |
当社の事業者登録は、業務委託による案件の取次・相互紹介を目的としたもので、登録料はかかりません。雇用の紹介や人材派遣ではありません。ご登録いただいた対応エリアや得意分野をもとに、条件に合う案件が発生したときに当社からご連絡します(ご紹介・受注をお約束するものではありません)。
よくある質問
Q. 小さなサロンでも企業案件を受けられますか
A. 受けられます。企業案件で重視されるのは規模より、同時に出せる人数、代役の手配方法、請求の整い方がはっきりしていることです。1〜2名の小さな現場や、地元で行われる撮影・行事は、むしろ小規模な事業者のほうが柔軟に対応できる場合があります。
Q. 個人事業主でも事業者として登録できますか
A. できます。法人・個人事業主のどちらでもご登録いただけます。スタッフを抱えて事業をされている場合は事業者として、ご自身おひとりで活動されている場合はアーティストとしてのご登録が分かりやすいです。
Q. 早朝や深夜の案件には、どう対応すればよいですか
A. 対応できるかどうかと、その場合の条件(時間帯による上乗せ、前泊の要否)をあらかじめ決めておくと、問い合わせに即答できます。婚礼や伝統行事では真夜中から支度が始まることもあるため、スタッフの移動手段と休息も含めて計画してください。
Q. 登録した情報は誰に共有されますか
A. 当社では、案件のご紹介に必要な範囲で、依頼主や提携事業者に登録情報を提供することがあります。登録の際に同意をいただいたうえでお預かりし、それ以外の目的には使用しません。詳しくは登録ページの「個人情報の取り扱いについて」をご確認ください。
Q. 登録に費用はかかりますか
A. 登録料はかかりません。条件に合う案件が発生した際に、内容と条件をご案内し、お受けいただけるかをご判断いただく流れです。
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対応エリア・得意分野・同時に出せる人数をご登録いただくと、条件に合う案件が発生した際にご連絡します。
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